一昨日の続き_

夏の高校野球決勝は凄いことになっちゃった。片付けしながら、途中見入ってしまった。37年振りの引き分け再試合だって!。両投手のためにも、せめて中一日お休みさせてあげたいなぁ。今日はきっと打撃戦?
さてと…
チラシ画像からもお分かりのように、「あしながおじさん」はおよそタツノコらしくありません。何ゆえこのような作品がタツノコで作られたのか、ちょっと疑問なのではないでしょうか。この説明はちょっと面倒です。でも、事情を知る当事者として、最低限のことはお伝えしときましょう。このままでは<幻の作品>になるやも…この機会に私の備忘録としてもね(笑)。
70年代も末のこと、日本ヘラルドは劇場用アニメ作品を企画として幾つか立ち上げました。配給は独立系のもの(親子映画とか)。ヘラルドとグループ・タックは常に密ではありましたが、この企画では別のアニメスタジオに食指を伸ばし、その一つがタツノコでした。先ず、80分の「怪盗ルパン813の謎」という作品が笹川ひろし監督、キャラクターデザイン九里一平で作られています。そしてすぐに次の作品として企画されたのが、この「あしながおじさん」だったのです。ところが、タツノコの現場は通常のTVシリーズ数本の製作体制を守るのが精一杯で、この次回作の受注に割くべきスタッフが見つかりません。
そんな折、グループ・タックから独立?し、新たにスタジオを構えた集団が有りました。「まんが子供文庫」のプロデューサーだった鬼丸一平を代表に、演出陣は私、矢沢則夫、森田浩光、辻伸一、美術陣は内田好之、阿部幸次、下道一範による「メルヘン社」です。
この集団にさっそくタツノコから声が掛かります。と、いっても私に打診なんですがね(他の連中はタツノコとは全く縁がない)。もう、グロスで全てお任せしたいと。正直、独立最初の仕事にしては美味しいです(笑)。ヘラルドも受注するのが旧知の我々と知って、これも歓迎(まるでご祝儀です)。シナリオは名作アニメを多く手懸けていた宮崎晃さんのものが、この時点でほぼ出来上がっていました。スケジュールに余裕が無いこと以外は、作り易い条件だらけ。絵コンテは私と森田が、美術は内田、設定を阿部と決めて、即、作業開始です。キャラクターデザインがどこか日本アニメの名作シリーズの匂いがするのも、昔から関修一さんと近い辻さんがデザインしたからでしょうね。タツノコからは天野嘉孝(のちに喜孝)さんをデザイナーとして立ててきたんですが、失礼ながら、我々の手には余るという判断でお引取り願ってしまった。
ですから、監督が昔一時期在籍していた私であるという以外、タツノコの雰囲気はありません。結局のところ、タツノコも自分の会社の作品という意識は殆んど無いと思いますよ。窓口になっただけみたいな感覚でしょう、きっと。公式HPの作品履歴にも載ってないんじゃないのかな。
長さは70分ちょっとで、シーンは約700(一カット平均の秒数が多い!)。作画枚数約3万5000枚、原画は友人、知人を総動員、動画、仕上げは台湾のアニメスタジオに発注(カミサンを動画チェックとして40日間派遣、タツノコも彩色検査は派遣しました)、一気集中でほぼ半年間で作り上げた映画です。私など最後は修羅場で倒れる寸前…まぁ、今となればそんなことも懐かしいだけですが。
声の出演は、当時NHK「マー姉ちゃん」で売り出したばかりの田中裕子(アフレコ初体験)と芸達者の米倉斉加年です。普段、タツノコ作品の賑やかな収録ばかりやっていた音響スタッフは、このゆったりした作品のテンポには、かなりイライラしてましたっけ(笑)。
TV放映の後、一般劇場でも公開、その後、各地の親子劇場(私も舞台挨拶させられた)で巡回上映されていきましたが、評判は良かったようです。
「メルヘン社」のその後は、引き続きタツノコからシリーズ「ベルフィーとリルビット」をグロス受注します。監督はタツノコのこれが初監督の林政行さん(りんたろうさんの実弟)。更にその後は…う〜ん、また、いずれ。
以上、久し振りの「アニメ業界昔ばなし」でした。