或る掲示板にこんな質問(疑問)があった。_

「この人たち、今度の再放送で著作権料もらえるの?」これは、私たちかつての制作スタッフに向けてのものです。お答えいたしましょう。もらえるも何も私たちには最初から権利は無いとされているのですよ。そんな馬鹿なことと思われるでしょうがこれは事実です。今では当然の権利と思われていることが30年前は認められなかったのですね。製作にお金を出した人にだけ権利があって(キャラクター料も演出料も支払っているから)、知的創作にかかる個人の著作権など存在しないとみなされたのです。私たちの主張は「それはフィルム制作での対価であって、キャラクター料も使用料にすぎない。すべて売り渡したものではない」というものでした。(至極まっとうでしょ?)もちろんこれは裁判などに持ち込まれた結果のものではありません。私たちは当時あまりにも若く、無知で、それだけの団結力も行動力も無かった。アメリカのように制作者のユニオンもないし、受注したアニメ会社も立場は弱かったから、一緒になって闘える筈もありませんでした(もちろん味方だったけど)。
先般の声優さんたちの、再放送に際しての二次使用の権利を主張して製作会社と争った裁判でついに勝利を勝ち取ったような、そこまでの闘争心も無く、私たちに出来た唯一の抵抗は「だったらもうやらない!」という今となればお粗末で単純な行動だけでした。そんなことをしても、代わりはいくらでも居るから屁でもないということだったでしょう。その意味では後進の人たちには大変な迷惑をかけたと恥じています(ある意味、逃げちゃったんですから)。後のスタッフは、権利は無いということを承知の上で制作に参加したと思われていたのでしょうね。
ただ、作品作りに取り組んだ情熱だけは売り渡したつもりはありません。ですからいつだってあれは自分の作品だと思っています。いくらそれで潤う人たちがいようと、その中には今の時代「後ろめたさを感じている人もきっといる筈」と私は信じていますから。
現在、マンガの世界で仕事して、権利にはより敏感になりました。少なくとも著作者の立場はアニメの世界とは大違いです。今回のTV放送を目の当たりにして、昔に引き戻されてしまいました。この権利意識が当時にあったならばと悔やまれるのも確かです。(当時の事情は、この日記の9月26日を参照のこと)
関東地方は夜は雨の予報…でも関西は晴れ時々曇りだから、「ききみみ頭巾」はやはり来週でしょうね。