月刊「広場」8月号_

「広場」307号

手に取り、一瞬ギクッ! 甲虫の正面ではありませんか。
この、ちょっと異色な表紙は高田実さん。そしてめくると、すぐに氏のマンガが始まっています。
ということは、これがマンガの扉も兼ねているのかな、と。そんなふうにも感じた次第(そう思わせようとの編集子の工夫か)。
巻頭にストーリーマンガというのは嬉しい構成ですね。
でも、今号、いつもに比べ連載記事が少ないようで…気のせいかしら?
その分、執筆者が増えるのは歓迎ですが、ちょっと総花的な印象を受けました。
(私の連載も含め)このところ、長期連載ものが軒並み片付いているので、主宰もお困りのようですね。
どなたか、ドーンと、柱というか目玉をば(笑)。チャンスですぞ!
※おたよりのページに、私宛に「次、何か始めろ」とのありがたいリクエストをいただきましたが、この場を借りて「只今、熟慮中…」とだけお返事させていただきます。
では、先月に最終回となった「並木座ウィークリーと共に」の、97号から100号の紹介。
※「プログラムの紹介よりも父親の回想記の方が面白かった」というご意見・感想に、嬉しいような悲しいような…その回想記はHP『萬雅堂総本舗』でまとめてどうぞ。


※都合により、オリジナルをスキャンしました。

●97号 扉は 私の顔 えと文…高峰秀子
上映は〈木下恵介撰集(2)〉 ※前号(96号)と同じ内容。
カルメン故郷に帰る」16日〜22日(昭和26年作品)
カルメン純情す」23日〜28日(昭和27年作品)
 ※スタッフ・キャストは略します。
映画随筆〈並木座ウィークリー〉(第九十七号)
─新春随想─「もう話してもいい話」 藤本真澄
※十二歳の高峰秀子を、松竹から一ヶ月百円(昭和十二年当時)でP・C・L(のちの東宝)に引き抜いた一件を(会社がとれないという、その予算をどうやってひねり出したか…)。 
〈映画ファン教育(エチケット)〉
「明るく楽しい松竹映画」「いつも楽しい東宝映画」「映画は大映」「時代劇は東映」「信用ある日活映画」等々。以上が邦画各社がもっぱら愛用しているキャッチフレーズである。(略)その呼びかけに対する答えは、観客のみが答えるのであることを映画関係者は常に考えていて貰いたい。(1956・1・16)
●98号 扉は 横山泰三作 ブルー・リボン像
上映は「東京物語」24日〜28日(昭和28年松竹作品)
〈解説〉
尾道に住む老夫婦が、老後の思い出に東京に住む子供達を訪ねることに端を発し、老夫婦と成人した子供達の愛情の機微を、小津監督一流のしみじみとした枯淡の筆致で描いたもので、左記の通り数多くの栄誉に輝くものである。
★28年度芸術祭・文部大臣賞受賞
キネマ旬報ベスト・テン第二位
★都民映画コンクール下半期第一位
★東京映画記者会選出ベスト・テン第四位
★NHKベスト・テン第五位
毎日映画コンクール助演女優賞杉村春子)受賞
シナリオ作家協会賞受賞
製作・山本武 脚本・野田高悟/小津安二郎 監督・小津安二郎 撮影・厚田雄春 美術・浜田辰雄 音楽・斉藤高順 
出演・笠智衆東山千栄子山村聰三宅邦子杉村春子原節子大坂志郎香川京子/十朱久雄/長岡輝子東野英治郎
《第6回ブルー・リボン賞決定》
東京映画記者会では、第六回ブルー・リボン賞を次の通り決定した。表彰式は一月三十日午後六時から並木座で行われ、式後、作品賞に決定した「浮雲」の鑑賞を行う。
※この日はベストテン入選の短編映画「教室の子供たち」「ひとりの母の記録」「北海道」(いずれも岩波映画)を授賞式前に鑑賞会と銘打って上映しています。いかにも並木座らしい!
★五五年度ベストテン★
浮雲 2夫婦善哉 3野菊の如き君なりき 4ここに泉あり 5警察日記 6女中ッ子 7血槍富士 8生きものの記録 9浮草日記 10美女と怪龍 次点 新平家物語 ※洋画は略
浮雲」(昭和30年東宝作品)
〈解説〉
 原作は林芙美子で、最もあぶらの乗り切った晩年に書かれ、(略)林、成瀬ものの集大成として恋の放浪と懊悩を描くこの作品は、左記の通り昨年度のベストワン作品である。
ブルー・リボン賞作品賞受賞
キネマ旬報/映画旬刊ベスト・テン第一位
★東京映画記者会選出ベスト・テン第一位
★映画旬刊賞 作品賞監督賞受賞
製作・藤本真澄 原作・林芙美子 脚色・水木洋子 監督・成瀬巳喜男 撮影・玉井正夫 美術・中古智 音楽・斉藤一郎 
出演・高峰秀子森雅之中北千枝子山形勲村上冬樹金子信雄岡田茉莉子加東大介/ロイ・H・ジェームス
〈支配人室〉
ブルー・リボン賞の名の示す通り初めは賞状をブルーのリボンで結んで授賞したのでしたが昭和二十八年に横山泰三氏の作に成るブルーリボン像が完成したので、それ以来(事務所の入口に飾ってある)並木座で授賞式を行っている訳です。※ん?(1956・1・24)
●99号 扉は ブルー・リボン特別賞に輝く片岡千恵蔵
※前号に「なお特別賞は千恵プロ以来、映画大衆と共に歩みながら、半歩前進の努力を怠らぬ片岡千恵蔵に贈ることになった。」とあります。
上映は「黒田騒動」(東映作品)
製作・大川博 企画・マキノ光雄/玉木潤一郎 原作・北条秀司 脚本・高岩肇 監督・内田吐夢
出演・片岡千恵蔵/大友柳太郎/片岡栄二郎/高堂国典/南原伸二/三浦光子/高千穂ひずる
〈解説〉
 徳川幕府の強硬な外様大名取潰し政策の行われている頃、筑前五十二万石の大藩に、一家老が主君を幕府に訴迫するという、大事件が起きた。(略)壮大な歴史の流れの中の黒田騒動を背景に「血槍富士」の内田吐夢が雄渾のメガホンをとるものである。 
〈映画評紹介〉
「風格ある時代劇」 谷村錦一(読売新聞)
〈支配人室〉
先週二十四日より小津安二郎の「早春」の封切に先だち「東京物語」を上映いたしましたが、そのため「カルメン純情す」を後半中止したことを深くお詫び申し上げます。※アララ…(1956・1・29)
●100号 扉は あいあい傘 ※森繁と淡島千景のサインですね。
上映は「夫婦善哉」(東宝作品)
製作・佐藤一郎 原作・織田作之助 脚本・八住利雄 監督・豊田四郎 音楽・団伊玖磨
出演・森繁久彌/小堀誠/司葉子/森川佳子/淡島千景浪花千栄子山茶花究/沢村宗之助
〈解説〉
 昭和二十二年一月結核で急逝し、戦時を含めた僅か六年間に燃えるように閃いて消えていった文壇の異端児故織田作之助出世作夫婦善哉」の映画化である。
ブルー・リボン賞 監督賞主演男優賞主演女優賞
★映画旬刊賞 男優演技賞女優演技賞
★三十年度芸術祭受賞
キネマ旬報ベストテン第二位
夫婦善哉を語る〉
豊田四郎森繁久彌淡島千景がそれぞれに…。  
〈支配人室〉
百号の到達、御支援に御礼申上げます。(1956・2・5)