3週目の「まんが日本昔ばなし」のこと。_

「こぶとり爺さん」については、再放送が始まるなんて知らない時に(9月26日)偶然書いちゃったからもういいかと思ったけど、ま、補足ってことで。
彦根のりおさんは、今では「カールおじさん」とか「サントリーのペンギン」などのキャラクターデザインでも知られる人。私が虫プロに入った時には「ジャングル大帝」で原画&演出をされていました(東映動画から移ってこられた)。私が配属されたのがジャングル作画班ですから、上司と部下、もしくは先生と生徒ということにもなります(先輩と後輩とはとても…)。「こぶとり爺さん」では奥さんのまふみさんが美術をされていますが、彼女はこの当時はアニメーターで作画班のマドンナでしたから、このカップル成立時には皆、陰で「美女と野獣」といっては鬱憤を晴らしたものです(笑)。
ま、余計な話はさておき、とにかく個性豊かで、ご自分の作家性をとても大事にされる方ですので、彦根さんの作る「昔ばなし」はグループ・タック内部の人間は皆、そのラッシュフィルムを観るのが毎回楽しみでした。私などごく一般の演出さんは、受け持った昔ばなしをどのように表現したら良いか、演出のスタイルは…キャラクターデザインはこのように、だったら美術はこの画材でこんな画風、と考えるのですが、彼はいつだって「彦根タッチ」で通します。常に楽しく!面白い!。その他の「カチカチ山」「金太郎」「しょじょ寺の狸ばやし」「古屋のもり」「地獄のあばれもの」もまったく同じ。必ず「まんが(彦根のりお)昔ばなし」にしてしまうのです。そんな作品群ですから、彼の作品の販売ビデオ化は一本もありません。というより、できなかったというべきかな。誰が見たって「あ、カールおじさんのだ」となってしまいますからね。
「カチカチ山」「金太郎」は後年に別の人によってリメイクされて販売ラインナップに加えられました。「販売ビデオに、有名どころの昔ばなしが何で外れてるんだ」という声に応えるにはそうせざるを得なかったのでしょう。
とにかく「まんが日本昔ばなし」という長寿番組の(千数百本と作られた中での)一番最初の放映作です。お楽しみに!
もう一本の「風の神とこども」
これについては作画のことを。スタッフタイトルはスタジオ・アロー(アニメCM界で名をはす熊田勇さんが主宰するスタジオ)となっていますが、実際は白梅進さん。彼の番組への関わりはこれが2本目。私の演出「養老の滝」で作画をお願いしたのが最初です。彼は私の古くからの友人。フリーの頃、二人で30分番組の原画を半パートずつ作画するなんてことをやってました(「アンデルセン物語」だったかな)。この頃から日本アニメーションの多くの作品で作画監督、キャラクターデザインを手がけています。のちに私が監督した「森のトントたち」という、サンタクロースが主人公の番組でもキャラクターデザインのすべてをお願いしました。彼の画風はちょっと合作スタイルというか、とても垢抜けてシャープなので、昔ばなしの土臭さとどうかなんて声もあったのですが、それは余計な心配事。以後、白梅進の表記に変更してからは演出にも参入するようになり、次第に主要スタッフとなっていくのです。この作品では、とにかく風の神に連なるこどもたちの数には閉口してましたね。ちょこまかしたこどもたちをたくさん描くの大変だもの!先週の「ききみみ頭巾」みたいに、お爺さんとキツネだけなんてのがいいんですよ。原画描く立場としましては(もちろん動画も仕上げもしんどい)。