久々のおにぎり♬

11時台はポツポツと…
正午からは次々!
で、本日は、
二八14(大盛り1)、十割11(大盛り3)、かけ3(大盛り1)の計28食。
そして、そばプリンが12。
店内満席(空き待ち)で「密」の不安もありつつ…も、
用意のそばは完売で、久し振りにコンビニおにぎりでのまかないとなった。
これがフロックではないことを願おう♬
さてさて、書棚の整理を再開したら、ずいぶんと前のアニメ雑誌が出てきて、私の匿名?文章を発見!
「あは、そういやこんなの書いたっけなぁ」と。

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「アニメスタッフが作る業界誌」って銘打ってますね。季刊かな。

昭和60年てことは1985年、35年も前か!
長いけど、いっちょ再録といきますか(笑)。

題して…
『世は情け昭和元禄新人アニメ浮世ばなし』アニメ家コン亭。

「こんにちは」
「はいはいどなた」
「あのー、××アニメスクールを今年の春に卒業した間仁矢といいますけどォ…」
「で、どんなご要件で」
「何となくそのまんまアニメ会社に入りたくなくて、ちょっとブラブラしてたんですけどォ…でもやっぱりどこかでアニメをやりたくてェ…それでここを人から聞きましてェ…」
「ああ、アニメーターになりたいの、いいよ机は空いてるし、仕事もあるからいつでもおいで」
「えっ、い、いいんですか」
「その代わり言っとくけど給料なんざないよ」
「エーッ給料ないんですか」
「当たり前だよ、ここは会社じゃないんだから」
「で、でもスタジオって」
「そりゃねスタジオって看板は出てるよ、仲間が集まって事務所ってことにしてんだから」
「じゃぁ…」
「まっ、例えればあんた、落語家んとこへ弟子入りするようなもんだな、この世界で20年近く食べてきてる私らにしてみりゃ、若い人への門戸は出来るだけ開けておいて上げるのが先輩の義務だと思うから、プロへの道のチャンスは作ってあげるけどね、ま、ちょいと偉そうに言ってしまうけど。本人の才能と努力、努力も一つの才能だけど、それしかない世界だからね」
「でも、お金が貰えないっていうのはちょっと…」
「心配はいらないよ、給料は無いっていったって、仕事のギャラはそっくりあんたのもんなんだから」
「は…」
「もちろんその仕事がプロとして使えるようになった場合だけどね」
「ハァ…」
「私らね、若い人を雇って商売してるわけじゃないの、分かる?」
「な、なんとなく…」
「本当にアニメの仕事をするのが好きでさ、いつか原画を描きたい、絵コンテ切ったり演出がしたい、企画にだって首を突っ込みたいなんていう、そんな連中の意欲には何とか応えてあげたいじゃないか」
「はぁ…でも収入が…」
「たいがいの人はしばらくは無収入だね。でも仕事ができるようになれば、あとはやればやっただけ自分の収入だよ」
「やればやっただけッ!」
「なんだよ急に身を乗り出して、あんた自分でどのくらいできるつもりか知らないけど、私らが見て大丈夫ってもんでないと発注元には渡さないんだから厳しいよ。いいかげんなもの渡したらこのスタジオの恥んなるからね」
「はい、あのォ…仲間と卒業制作で作ったビデオ持ってきたんですけど一応見てもらおうかと…」
「ほう、そりゃ大したもんだ、あとで見せてもらうよ」
「将来はボク『日本昔ばなし』みたいな個人の才能を出せるようなものを作りたいんです」
「あ、そう…いい心がけだけどね実に、でもねェ”やりたい”と”やれる”の間にはすごーい開きがあるんだよ。そいで”やれない”のを他人(ひと)のせいにしないこと、いいね」
「はい」
「商業アニメって結局は集団作業だからねェ、個人がどこまで表現できるかっていうとホント難しいよ。この世界でとりあえず食べてこうと思ったら、ある時期、個を殺すってことが出来なきゃダメだね」
「ぼくもその通りだと思ってます」
「ま、あんたにそんだけの覚悟があるんならいらっしゃい」
「はい、じゃ明日から来させていただきます」
       ×      ×
前座「ねぇ師匠、今来た男の子、続きますかねぇ」
二ツ目「師匠はああいうのが来るといつも同じセリフ言ってますけど、もう何人逃げました?」
真打「以前(せん)に何とかいうアニメ雑誌に師匠のインタビュー記事が載ったら、ずいぶんと手紙やら電話やら訪問があったじゃないですか、師匠それにいちいち丁寧に応えてて、そん時ので今残ってんのたった一人ですよ」
師匠「一人だって残ってりゃ上等だァ、いいんだよ、私だって、ああこいつは話しても無駄だなぁって思ったりはするけどもさ、一応にもアニメが好きだって言って訪ねてくんだから応対しなきゃ失礼じゃないか」
前「そんなもんすかね」
二「しかし最近はどうして、こう次から次に来る奴みんな自信満々なんでしょうね。私など線も満足に引けませんが、なんて謙虚な奴はいないもんですかねェ」
師「おまいさん他人のこと言えんのかい、ま、なに、むしろ鼻っ柱のつおい方がものになるんだよ、プロになってみて、初めて自分の力がわかるからね、そんでもって何クソって気になるか、自分の事を分からねぇ世間が悪いって方になるかどっちかだ」
真「そりゃこの商売、世間を責めたって始まらねぇやな」
師「そうだろ、それがわかってりゃ大したもんだ」
二「でも世間の目ってな冷たいですね」
師「そりゃそうさ、昔でいやぁ河原乞食、ま、今は世間もアニメーションっていうと少しは知ってもくれてはいるがね、所詮は潜在的失業者、不自由業に変わりはないのさ、社会的な認知は無いも同然だよ、何だったらちょいと銀行へでも行ってごらん、腹が立つのも忘れるほど相手にしてくれないから、ホントだよ」
真「やけに強調しますね師匠」
師「ああ、まぁね、そりゃどうでもいいけど、ま、とにかくよっぽど好きじゃなきゃやってられない世界だぁね」
二「好きなことやってオマンマ食べようってたら、そんくらい承知してなきゃ」
前「でも厳しいスよホントに…」
真「おい何を涙ぐんでんだよおまえ」
       ×      ×
前・二「あ、お帰りなさい」
師「はい、ただいま」
二「あの、師匠、こないだから来てた間仁矢君ですけど今日でやめたいって、さっき荷物まとめて帰りました」
師「あそう、やめたいって言うだけ立派だね、或る日突然何も言わずに来なくなるってのが普通なんだから」
二「少しは根性あるかと思ったんですけどねぇ」
真「なまじ頭でっかちだったから、清書が出来ないなんて事でつまづいちまって、いたたまれなかったんだなきっと」
師「どんなに才能があっても基本がしっかりしてての芸だからねェ、最初(はな)っから思い通りにはいかないからって、あせる必要はさらさらないんだがな」
前「ええ…」
師「一生の仕事にしようと思ったらはじめの一、二年は屁みてえなもんさ、落語の世界の名人上手だって死ぬまで勉強というだろ」
真「そうですね」
前「どうして簡単にやめちゃうんですかね」
二「あきらめがいいっていうのか」
真「やめるっていやぁほら、ぼくはアニメーターに向いてませんからパン屋さんになりますってたのがいたでしょ、あれ、うちで勉強しましたってよそで演出やってますよ」
師「ひでぇもんだな、でもま、それで通用してるんだったらいいやな」
二「大阪から来たおにいちゃんもしばらくはほかほか弁当屋さんでアルバイトしながら通ってたけど、結局は帰っちゃったし」
前「青森の高校生もアニメの現実には挫折したみたいでしたね」
真「いや、あれは正解だよ」
二「おばぁちゃんと二人暮らしの女の子もアニメには向かなかったみたいね」
師「うん、ちょいとばかり可哀そうだったな、あれは」
前「暗~い女の子いましたね、ドア開けて中に人がいたら帰っちゃうっていう」
真「ああそんなのもいたな」
二「演出助手やりたいからって、参考にシナリオと絵コンテ持ってってそれっきりなんていいかげんなのもいましたね」
師「まぁいろんなのがいるさ、これでやめられるっていうのもいい時代だってことだ」
二「てえと?」
師「昔は、でもしかアニメーターっていってな」
前「でもしかアニメーター、何です?」
師「つまり何も出来ないからアニメでもやろうか、まともな職につけないからアニメしかやれないなんてな、ま、ちょいと絵を描こうなんて奴は皆そんな具合だったなぁ」
前「へぇー、でもそんなら今でもいますよ、ねぇ兄(あに)さん」
二「何だよお前、人の顔みて言うこたないだろ」
       ×      ×
「こんにちは、○○アニメーター学院の布庵といいますが…」
「はいはい」

注(あにめ家コンテさんはアニメ演出家です。コンテさんのスタジオに入社希望の方は当誌編集部気付でどうぞ) 

…と、ここまで。

 当時、業界に<あにめ家コンテ>って高座名で落語やってる奴がいるって、どっかで聞きつけたんでしょうね。
そんな雰囲気でひとつ「アニメ業界の新入生に向けて」っていう依頼だったんだけど…
今、読み返してみると、小っ恥ずかしいったらありゃしない(笑)。 

 虚実あり、ってことで。