304号_

月刊「広場」304号

ん?この風景はどこか見覚えが…と思ったら、やはり清瀬の水天宮だった(一時期、清瀬に住んでた私)。
この表紙、西岡たかしさんのスケッチです。
今号は、先般の「トキワ荘跡地&落合散策ツアー」レポートが主宰の筆によって掲載されている。
私の当該日記も転載されているので、併せて読むのも面白いかと(むろん主宰の方が詳細)。
途中に、ツアーの企画人、大熊道雄さん作成の「トキワ荘記念碑周辺案内図」があり、巻末にはツアーの主役(?)永田竹丸さんの「シンちゃん」(1975年作品)が10ページ再録されている。
西岡さんも一緒だったから、参加者全員が今号の誌面に絡んでいるということになる。
もっとも、毎号のことでもあるけどね(笑)。
では、月遅れの<「並木座ウィークリー」と共に>第22回です(例によって、自伝の部分は「萬雅堂総本舗」だけに転載)。


●85号 扉は 「遠い雲」に寄せて え・田村高広
上映は「遠い雲」(松竹作品)
製作・久保光三 脚色・木下恵介松山善三 監督・木下恵介
出演・高峰秀子佐田啓二高橋貞二/田村高広/中川弘子
〈解説〉
昨秋の大作「二十四の瞳」以来構想を練っていた木下監督オリジナル作品で、多彩な人物を登場させて、そこに新しい生き方、考え方と旧いものとのからみ合いを描く心理的ドラマである。
☆映画随筆〈並木座ウィークリー〉(第八十五号)
「木下監督」 松山善三 
木下組のスタッフは、みんなが木下さんと呼ぶ。監督とか、先生とか、親しみのない言葉で呼ばれることを木下さんは嫌うからである。(略) ※と、明るく楽しい撮影現場の様子を紹介。
「高峰さんのこと」 田村高広
(略)ロケでも、セットでも、アフレコでも、困るとボクはベソをかいて、高峰さんの顔を見る。(ここんとこ、これでいいんでしょうか?)そして彼女の目が、(うんうん、それで大丈夫)とうなずいているのを見つけると、ほっと安心した。カメラも、人だかりも、平気になった。高峰さんは、ボクの先生である。優しいデコ先生である。(略)
〈WIPE〉
内閣に「映画審議会」を設置。さて何をするのでしょう?検閲機関でもなく統制機関でもないとすると。
〈観客席〉
私は一年に約五本位の映画を見ますが、そのうちの一本は必ず並木座で見ます。本当です。安くて感じよくて、でも何回も来られないのが残念です。(美校生 ○○○) ※ハハハ何これ?(1955・10・5)
●86号 扉は 「樋口一葉」の肖像と略歴
上映は「たけくらべ」(新東宝作品)
原作・樋口一葉 脚本・八住利雄 監督・五所平之助 
出演・美空ひばり中村是好/中村満子/岸恵子/北原隆
〈解説〉
天才女流作家樋口一葉の六十年祭を記念して五所平之助監督が繊細な感覚で監督する。
☆映画随筆〈並木座ウィークリー〉(第八十六号)
「五所さんのこと」 八住利雄 
(略)五所さんは、庶民の作家だといわれている。庶民の生活を見る目はあたたかくその善意を信ずることは深い。(略)
★「たけくらべアンケート」       
十返肇   
樋口一葉のもっている流露感と五所平之助の抒情味が渾然と、とけあった美しい映画になっています。立派な作品と存じます。
森田たま
美空ひばりという女優をはじめて見て、そのむかし高峰秀子の子役に驚いたと同じ驚きを感じました。各優とも実によく演技力を発揮していて、五所監督のしぼり出し方のうまさに頭がさがります。文句なしにいい映画です。
〈支配人室〉
並木座が発足して二周年。人間でいうならばようやく赤ん坊の境を脱して来たとはいえ「はしか」や「百日咳」等という病気が待ちかまえている大変心配な年頃です。一本立ての日本名画上映という企画は一応成功したといえましょうが、さて(略)(1955・10・12)
●87号 扉は 「千葉先生」 えと文 中原ひとみ
上映は「続・目白三平」(文部省選定・東映作品)
製作・大川博 企画・藤本真澄金子正且/斉藤安代 原作・中村武志 脚色・沢村勉 監督・千葉泰樹
出演・笠智衆望月優子/杉本博/日吉としやす/小林桂樹
〈解説〉
貧しいながらもささやかな幸福を守って生きていく現代庶民の姿を、サラリーマン目白三平に託し、軽妙なタッチで人生の妙味を描く中村武志の「目白三平ものがたり」の映画化第二弾。
☆映画随筆〈並木座ウィークリー〉(第八十七号)
「笠さんのうまさ」 千葉泰樹
(略)往年、まだ笠智衆と云う名前がスクリーンでは殆ど無名に等しかった頃でも蒲田にリュウと云う大変熱心な大部屋のヌシが居るという語り草があった。(略)笠さんのうまさは単に技術的にうまいと云うだけでなく味のうまさに迄達していると思うのは、私のみの感じ方であろうか。(略)
〈映画評紹介〉
「しみじみ迫る哀歌」 読売新聞映画評
ありきたりのサラリーマンの家庭を描いて再度の<三平登場>これではちょっと面白味なし…といったことになるが、見てると少しもアキない。そして前篇同様にサラリーマンの哀歓がしみじみと見る者に迫るところが、この映画のミソである。(錦)(1955・10・19)
●88号 扉は 「私の顔」 えと文 中村メイコ
上映は「くちづけ」(東宝作品)
製作・藤本真澄成瀬巳喜男 原作・石坂洋次郎 脚色・松山善三 監督・(第一話)筧正典/(第二話)鈴木英夫/(第三話)成瀬巳喜男 
出演・(第一話)「くちづけ」/青山京子/太刀川洋一/十朱久雄/杉葉子/滝花久子/笠智衆/日吉としやす
(第二話)「霧の中の少女」/司葉子中原ひとみ/伊東隆/飯田蝶子藤原釜足清川虹子/小泉博
(第三話)「女同士」/上原謙高峰秀子小林桂樹/伊豆肇/中村メイコ長岡輝子
〈解説〉
石坂洋次郎の三つの短編「くちづけ」「霧の中の少女」「女同士」を集めて、成瀬、鈴木、筧の三監督が、それぞれの持つ色彩を生かして描いたもので、石坂文学のもつ明るいユーモアに溢れた青春ものである。
☆映画随筆〈並木座ウィークリー〉(第八十八号)
「新しいスター」 筧正典 
次代を背負うスターの育成には誰もが関心を持っているが、映画の演技者ほど育てることが難しいものはないと思はれます。企画やシナリオに新スター育成のための温い注意が払われていることが先ず第一条件で、監督としてもこの条件が十分でなければ新人を登用すると云うことは躊躇せざるを得ないわけです。無理な役で新人を使うことはその人を殺すことになるばかりでなく、作品としても失敗する可能性が強くなります。(略)(1955・10・26)