302号_

月刊「広場」09・2

表紙は「ピエロ」西岡たかしさん。
300号到達!の興奮も収まり、「広場」も平常営業、いつもの落ち着いた誌面に戻ったようです(笑)。
それでも300号効果なのか、執筆陣が多彩になったと感じられるのは気のせい…?
では、恒例の「並木座ウィークリー」月遅れ転載を。


●77号 扉は ─丸山誠治論─ 双葉十三郎
上映は「男ありて」文部省選定(東宝作品)
脚本・菊島隆三 監督・丸山誠治
出演・志村喬/夏川静江/岡田茉莉子伊藤隆三船敏郎
〈解説〉
職業野球に全てを捧げる老監督を描くもので、顧みる暇のない家庭生活に於けるしみじみとした夫婦愛、そして老監督の仕事への情熱が、やがて子供や選手達に理解されてゆく姿を描いている。
映画随筆〈並木座ウィークリー〉(第七十七号)
「演出意図」 丸山誠治
〈支配人室〉
場内外の改装工事の要項が決定してほっと一息です。☆休館中ウィークリーも休刊となります。(1955・6・29)
●78号 扉は 並木座の素顔 えと文…菅井一郎
上映は「狼」(製作・近代映画協会/配給・独立映画株式会社)
脚本監督・新藤兼人 製作・糸屋寿雄/山田典吾/能登節雄
出演・乙羽信子/浜村純/殿山泰司/菅井一郎
〈解説〉
気の弱い善良な人達が落ちゆく最後の場所としての外交員の生態は世相をじかに反映した、映画的題材で、貧しくも善良な彼等が犯行を犯し?狼?と呼ばれた。だが、彼等をここへ追いこんだものこそ狼の本態ではないか。この映画は、その主題を追求する。
映画随筆〈並木座ウィークリー〉(第七十八号)
「撮影余話」 黒川義博(「狼」助監督) 
〈支配人室〉
☆独立映画配給網には銀座方面に上映館がないので困るという声を聴きますので、小さな並木座で採算の取れる筈もありませんが皆様に一年に一度の犠牲興行です。但し他の上映館との折合いから百円を一般料金とした点が残念です。
(1955・7・5)
●79号 扉は 内田吐夢素描 キネマ旬報映画大鑑より
上映は ─内田吐夢研究週間─として、初めに「たそがれ酒場」(新東宝作品)、翌週が「血槍富士」(東映作品)
「たそがれ酒場」
製作・柴田清一郎 脚本・灘千造 監督・内田吐夢
出演・小杉勇/小野比呂志/宮原卓也/有馬是馬/多々良純
〈解説〉
現代劇を手がけるのは十七年ぶりという監督が、四十坪の大衆酒場ワンセットの中に劇構成の一切を盛り、脚本の最初の頁から順に撮影するという野心的実験に取組んだ作品である。
「血槍富士」
製作・大川博 企画・マキノ光雄/玉木潤一郎 企画協力・溝口健二小津安二郎清水宏伊藤大輔 原作・井上金太郎 脚色・八尋不二 脚本・三村伸太郎 監督・内田吐夢
出演・片岡千恵蔵/島田照夫/加東大介/喜多川千鶴
〈解説〉
巨匠内田吐夢監督が十数年の空白を一挙にとり戻すべく、映画界の友人知己のバックアップでメガホンをとった帰国第一作である。一人の武士が封建的な世相に矛盾を感じ真実にめざめてゆく過程を軽い笑いと人情味のなかに描く意欲作である。
映画随筆〈並木座ウィークリー〉(第七十九号)
「吐夢さんのこと」 筈見恒夫 
〈支配人室〉
※改装なった場内の平面図を紹介しています。「座席が増え、傾斜が多くなり見よくなったと思います。」と。(1955・8・10)
●80号 扉は 田坂具隆素描 キネマ旬報映画大鑑より
上映は「女中ッ子」文部省選定(日活作品)
製作・芦田正蔵 原作・由起しげ子 脚本・田坂具隆須崎勝彌 監督・田坂具隆 
出演・左幸子/伊庭輝夫/田辺靖雄轟夕起子佐野周二
〈解説〉
東北から来た自然児織本初、この自然児の習性と善意とユーモラスな実行力を、笑いと涙で描く重厚なホームドラマである。
映画随筆〈並木座ウィークリー〉(第八十号)
「ぐりゆうさん」のこと 澤村勉
※具隆=ぐりゅう ということですね。
〈映画ファン教育(エチケット)〉
★最近におけるテレビの普及にはめざましいものがあり、受像機の台数は全国で八万を突破したといわれている。
〈観客席〉
☆新装開館おめでとうございます。
☆とうとう並木座も美しく生まれかわって、私達の前に現れましたね。
〈支配人室〉
多くの人に愛されている並木座も映画界の冷たい嵐の中に置かれ、その重圧に苦しみ抜いている。(略)ファンの皆様の為にも並木座は力の及ぶ限り理想に向かって走り続けるでしょう。新装の館前に立って過去を振り返り前途を思うと、唯並木座は其の存在の意義を知ってくれる人によって生き、其の支持によってのみ長く映画界に其の名を連ねる事が出来ると思っている。
※なんだか悲壮ですねぇ… (1955・8・24)